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2013年11月25日 (月)

塚田行政書士事務所営業中 ~書評 酒井順子著「ユーミンの罪」~

私が「ユーミン」こと現在の松任谷由実(当時は荒井由実)先生の歌を最初に記憶しているのは、小学校3~4年生の時だと思います。父が運転する車の中で、ラジオから流れていた「あの日に帰りたい」(1975年作)を聴き、理由はわかりませんが、この曲のサビの歌詞とメロディーがしっかり頭に残っていました。

この曲が「あの日に帰りたい」という題名だと知ったのは、それから数年後のことです。

本書は著者が「小説現代」に連載していた「文学としてのユーミン」を改題、それに加筆されたものです。おそらく、今回のタイトル名は出版社(講談社)、もしくは著者・出版社の両方の意図にて、あえて「ユーミンの罪」という若干刺激的なタイトルとしたのでしょう。内容的には原題の「文学としてのユーミン」が、本書の内容を説明するに適当であると思います。

新書版なのですが、タイトル名とともに、「ユーミンの歌とは女の業(ごう)の肯定である・ユーミンとともに駆け抜けた1973年~バブル崩壊」との文字が、本の帯におどっていました。

初めてのアルバム「ひこうき雲」(1973年)から「DAWN PURPLE」(1991年)まで。当時の社会世相、男女の結婚観やジェンダー問題、はたまた「バブル」の始まりからその崩壊まで、松任谷由実(以下はユーミンと表現させていただきます)先生のアルバムをもとに、その歌詞や曲から、著者は当時の社会状況や自分史を語ります。

著者は1966年生まれ。私も同じ年に生を受けました。また、著者はユーミンの後輩にあたり、立教女学院高校出身(一方私の高校の先輩は演歌歌手の山本譲二先輩です)、私も1980年代中盤から後半にかけ、西東京に在住しておりました。ユーミンの実家(呉服店)も、実際に見たことがあります。著者が以前勤務していた会社は、某大手広告代理店。実は著者が入社する1年前、私も就活にてこの会社の入社試験を受けました(以前にも申しましたが私は入社できず撃沈しております)。

本書のなかで「中央線(東京のJR線)で西に向かうと『じ』がつく駅がくる度に気温が一度ずつ下がる」(高円寺・吉祥寺・国分寺・八王子)、との記載がありますが、これなど私自らも経験したものでした。

著者が「ユーミン教」の信者になったのは、どうも中学生の頃のようです。私は男ですが、私もかつては「ユーミン教」の準構成員でした(いや立派な信者だったかもしれません)。この本にも書かれていますが、同世代の男子では、当時は「松田聖子」(ちゃん)が圧倒的な人気でした。「男子」でユーミン派というのは、ごく少数派であったかもしれません。

本書のキーワードは「(女にとっての)女」「(女にとっての)男」「(女にとっての)恋愛」「(女にとっての)結婚」「(女にとっての)車」「(女にとっての)仕事」など、ユーミンの歌がそうなのかもしれませんが、主に女性の観点からの、女性による、女性のための評論ともいえるでしょうか。ユーミンの歌を「万葉集」や「古今和歌集」の女流歌人の「歌」と思えば、今回の著作はその立派な解説本となりうるでしょう。

本の帯でもあったように、話はバブル経済にまで話題が及びます。1980年に「ダイアモンドダストが消えぬまに」というアルバムが出されました。そろそろ「バブル」の足音が聞こえ始めた頃、このアルバムタイトル名(ダイアモンドダストが消えぬまに)の曲にて

「Diamond Dust 幾千の泡(あわ)を見送って時が止まっていた海の底 Diamond Dust 幾億の波を見上げたらなぜか思いきり泣けた」「Diamond Dust シャンパンをのぞいたら帰りたかったの去年へ」

との歌詞があります。つまり、恋も泡も時代も、はかなく消えてしまう。これなど「バブル」=「泡」と考えれば、この詩は後のバブルの饗宴と終息をユーミンは予感していたのでは、と著者は考えるのです。

結局、著者は最終的には「ユーミン教」を卒業します。その理由が本書の中で述べられています。

「バブルの崩壊によって自分の生活が激変したわけではありませんが、会社を辞めたことによって、私の中では一本裏道に入ったという意識が生まれました。(中略)二十代後半を迎えようという時にいきなり無所属となった私は、ユーミン断ちをすることによって、無所属人生への覚悟を決めたように思います。」

著者が「ユーミン」断ちをしたのは、この本にて最後に紹介されたアルバム「DAWN PURPLE」が出された1991年。偶然ですが、ほぼ全部の最新アルバムをチェックしていた私も、1988年以降はそれをしなくなりました。1988年とは私が大学法学部を卒業、そして翌年の1989年に医学部に入学しました。著者と同様、その年はある意味、私が人生の裏道に入ってしまった時にあたります。

現代社会の世相として、少子化・晩婚化・女性の社会進出や性的開放等。これらの萌芽は1970年から1980年以降の社会変化、とりわけ女性の価値観や人生観の変化に負うところが多いのではと思います。同時代を生きた人々、またその時代を知らない若い人々も、このユーミンの曲を聴きながら、時代をたどってみてはどうでしょう。

こじつけになるかもしれませんが、行政書士試験の現代経済・政治・社会史、また国語読解問題対策としても、一度お読みになってみてください。

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